11.03.2018

「母親から逃げられない」Hさんのケース

Hさんの職場は東京都港区にありました。快活な女性です。
もうすでに社会人3年目でしたけど、実家から毎日出勤していました。このように実家から会社に通う若者は最近増えて来ているので「家賃とか生活費をお給料から払わなくていいなあ」ぐらいに思っていました。



ある日、オフィスで彼女と雑談をしていて、実家がどの辺にあるのか聞いてみたところ、神奈川県のかなり遠いところから片道2時間近くかけて通っているとのこと。そんな彼女は、

「一人暮らししたいんです」

と言う。

すればいいんじゃないの?いくらもらっているか具体的にはわからないけど、うちの会社の給料なら、贅沢できなくても普通のマンションぐらいは3年目でも借りれると思うから、職場に近いところで一人暮らしにチャレンジしてみたら?彼氏ができたりすると、実家だと不便じゃない? 

わたしはよくある若者の、一人暮らしがしたいけど、実家はお金かからないしなんだかんだで居心地いいからふんぎりがつかないという典型的なパターンだと思っていました。すると彼女は、

「わたしが一人暮らししたいって言うと、母に死ぬって言われるんです。わたしがいないと寂しくて死ぬっていうんです」

これは話を面白くするために多少盛って話しているのではないか?とはじめ思ったのですが、どうやら深刻な様子でした。彼女は英語に堪能で、将来は海外でも働いてみたいなという小さな夢も持っていました。

「海外に行くって言うものなら、ついて行くって言うんです」
「わたしはどこへもいけないんですよ」
「母から逃げられないんです」

私は、彼女の母親が毒親かどうかということをジャッジしたい訳ではありません。軽いオフィスのランチタイムのひとときで、その人の全てがわかるわけはありません。それでも、彼女の「一人暮らしがしたい」という誰もが持っているささやかな若者の夢というものを、親の都合で潰していいものかと思うのです。

このようなケースは多いのではないかと思います。この後の彼女がどうなったのか話をしていませんが、もし彼女が母親を振り切っていればそれは喜ばしいこと。しかし、もし、今でも母親の呪縛から逃れられずにもがいているのだとしたら、彼女自身の未来を自分でつくっていけるように遠くから願うばかりです。








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